2015
秋田県角館町に400年以上伝わる「火振りかまくら」。菅(すげ)から編み込まれた炭俵に火をつけ振り回し厄を祓い、五穀豊穣、無病息災を祈願する冬の伝統行事だ。火振りかまくらの写真は、スローシャッターの効果で炎の軌跡が円状となる撮影方法が一般的であるが、私は高速シャッターによって肉眼では見ることのできない表情を捉えた。焼け散る炭俵と一体になった炎の造形は、回る速度や方向、風などの天候によって変化し、同じ形は2度と生まれない。人の手が編み込んだ炭俵が、自然の火によって解きほぐれてゆく瞬間。伝統行事としての意味を超えた、400年間繰り返される人と自然のサイクルを写真に定着させたい。何より、太古より人類に恐れを抱かせると同時に惹きつけてやまない「火」そのものの魅力に、私自身も取り憑かれているのかもしれない。